事実・データとは
「事実・データ」というと何を思い浮かべますか。教科書に書いてある「歴史的事実」、理科の実験で得られる「測定データ」などでしょうか。しかし、事実・データは言葉や数値で表されるものばかりではありません。
下の図を見てください。ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」(1495-98)という同じ資料から、対照的な2つの主張が引き出されています。遠近法が駆使されているという事実に目を向ければ、「遠近法は中世絵画にはなかった新しい技法である」を論拠にして、この絵が描かれた時代は中世とは異なる時代、すなわち近世であるという主張が導かれます。一方、題材が中世絵画と同じくキリスト教からとられているという事実に目を向ければ、「キリスト教は中世絵画に多くみられる題材である」を論拠にして、ルネサンスはまだ中世であるという主張を導くこともできます。こうして、ルネサンスが中世から近世への過渡期であったということを、1つの絵画から読み解くことができるのです。